はじめに
広大な山並み、街の夜景、朝焼けの海岸線――風景写真は感動をそのまま切り取れるジャンルです。
しかし「オートモードで撮ったら空が真っ白」「思ったより立体感が出ない」といった壁にぶつかる人も多いはず。
本記事では 機材準備・撮影設定・構図・光・露出差対策・後処理・トラブルシューティング の7ステップで、風景写真 撮り方の要点を、徹底解説します。
1. 機材選びと事前チェック
風景写真ではセンサーサイズが大きいほどダイナミックレンジが広がり、空と地表の濃淡差を豊かに表現できます。
APS-C やフルサイズのミラーレスなら RAW データの粘りが十分。レンズは 16–35mm の広角ズームが定番ですが、遠景の山並みを圧縮して迫力を出したい場合は 70–200mm の望遠ズームも重宝します。
三脚はカーボン製を選べばブレを抑えつつ登山や長距離移動でも疲れにくい点がメリット。C-PL フィルターで水面や葉の反射を除去すれば彩度がワンランク向上し、ND フィルターを併用すれば滝や雲を滑らかに表現できます。
撮影前には
- センサーとレンズ前面のほこりチェック
- 予備バッテリー・SDカード残量確認
- 天気アプリで雲量と日の出・日の入り時刻を把握
の“3 点セット”を習慣化しましょう。
2. カメラ設定の基本
ISO100を基準にノイズを最小化し、絞りはF8〜F11でパンフォーカスを狙います。
シャッター速度は三脚を用いた長秒撮影が前提。滝や川では 1〜2 秒、雲の流れを写すなら 30 秒以上を試してみましょう。
ホワイトバランスは「晴天」固定+RAW撮影で後から色温度を微調整するのが安定的。
露出モードはマニュアル、フォーカスはワンショット AF で合わせたあとMF に切り替えて再構図することでピントずれを防げます。
3. 構図を決める 3 つの定石
- **前景(フォアグラウンド)**を入れる
- 足元の花や岩を配置して奥行きを演出。視線誘導と立体感が一気に高まります。
- リーディングラインを活用する
- 川や道路、柵など直線を使い、主役へ視線を導くことで没入感が向上。
- 三分割法+水平線ルール
- 空を主役にしたいなら水平線を下1/3、地表を主役にしたいなら上1/3に配置。
構図は経験値がものを言います。同じ場所でも高さや立ち位置を10cm変えるだけで写真の印象は激変します。
ファインダーを覗く前に「何を一番見せたいか」を言語化し、不要な要素を大胆に削ると“情報密度”が高い一枚になります。
4. 光を読む ─ ゴールデンアワー & ブルーアワー
ゴールデンアワー(日の出直後・日没直前)は太陽高度が低く、斜光が被写体の輪郭を際立たせる時間帯。
人物を含めたランドスケープでは肌や草木が柔らかく輝き、コントラストも高過ぎないので初心者でも写りが安定します。
対してブルーアワーは太陽が地平線の下に沈み、空が深い青に染まる魔法の数十分。
街灯や家の明かりがともる瞬間はオレンジとブルーの補色対比が生まれ、ドラマチックな風景写真が撮れます。
三脚+低 ISO で長秒露光すればノイズも最小限に抑えられます。

5. 露出差への対処
山岳や海岸では空が極端に明るく地表が暗い“ハイコントラスト”に悩まされます。
- ハーフ ND フィルターで空側のみ減光すれば、一発撮りで階調が整います。
- フィルターがない場合はブラケット撮影(±2EV×3枚)→HDR 合成が有効。
- 逆光でシルエットを強調したいときは露出補正を −1〜−2EV へ振り、周囲を暗く落とすと主役の輪郭がクッキリ浮かびます。
6. 後処理 3 ステップ
- RAW 現像
- Lightroom や Capture One で露出とホワイトバランスを微調整。ハイライト・シャドウを 30〜50% 内で戻すと自然なメリハリに。
- トーンカーブで中間調を締める
- S 字カーブを浅めに加えると立体感が増し、SNS のタイムラインでも埋もれません。
- ディテール強調 & ノイズ低減
- 高 ISO が避けられなかった夜景は、輝度ノイズを 20〜30% 抑えつつディテールを 40% 程度シャープに戻すと質感が復活します。
7. よくある失敗と対策
失敗例 | 主因 | 即効リカバリー |
---|---|---|
空が白飛び | 露出オーバー | ハイライト警告+−1EV で再撮影 |
手ブレ | 三脚未固定 | リモートレリーズ+2秒セルフ |
画面が単調 | 構図ミス | 前景に花・岩・人物を配置 |
風景写真の“事故”は現場で直すのがコツ。ヒストグラム確認とプレビュー拡大を怠らなければ、大切な一瞬を失うリスクを大幅に減らせます。
まとめ
風景写真は 「準備7割・撮影2割・仕上げ1割」 が黄金比。本記事で紹介した
- 広角+望遠レンズの使い分け
- ISO100/F8~F11/マニュアル露出
- 前景+リーディングライン+三分割法
- ゴールデン&ブルーアワーの活用
- ハーフNDフィルターとHDRの併用
- RAW現像でのトーン調整
をチェックリスト化し、まずは近所の公園や海岸で試してみてください。経験値が増えるほどランドスケープ 写真 コツが体に染み込み、思い描いた光と色がそのまま写真に乗り移るようになります。
